試訳
自然
私は羨ましく思わない、あの大袈裟なバカども
一匹のうさぎの巣穴に惚れ惚れしているバカどもを
だって自然というのは醜くて、うんざりさせ、敵意を向けてくるものだから——
自然が人間に伝えるべきメッセージなんてない。
力強いメルセデスのハンドルを握って
人里離れた壮大な場所を横切っていくのは心地がいい——
シフトレバーを巧みに操作し
ひとは山や川、状況を支配する。
密集した森は陽のしたを滑っていき
昔馴染みのように思える——
森の谷底にひとは驚異を押し込み、
数時間後には安心している——
車から降りるとうんざりしはじめる。
積み上げられた不快の只中でつまづく、
下劣で意味を失った場所、
石やら茨、蝿やら蛇で作られた場所の只中で。
惜しまれるのは、駐車場、ガソリンのにおい、
ニッケル製カウンターの静謐で穏やかなきらめき——
手遅れだ。寒すぎる。夜がはじまる。
森が見る残虐な夢のなかでおまえたちは締め付けられる。
・一行目で「羨ましく思わない」と語り手が述べているのは、本当は羨ましい気持ちの裏返しか? 本当は語り手も自然に惚れ惚れしたい? あるいはみんなでワイワイしていることへの嫉妬?
・メルセデスは『地図と領土』で反自然主義者のジャスランが乗っていた車。自然支配の道具としての車。また、防御壁・避難場所としての車。
・二連目と三連目は、安全地帯から自然を楽しむ人間の姿を描き、一方で四連目と五連目では反転して生身の状態で自然に敵意を向けられる人間の姿を描いている。
・「石やら茨、蝿やら蛇」に、聖書的なイメージが感じられる。
・語り手の方が、自然というものの制御できない力を理解している点である意味、自然派であるようにも思える。
・「ニッケル製カウンター」は、道路沿いにある軽食を出すレストランにあるものかと思われる。
ヴァカンス
無為の時間。人生に根を下ろす空白の時。
太陽光が敷石の上でくるくる回る。
眠る太陽──微動だにしない昼下がり。
金属の反射光が砂の上で交差する。
湿って淀んだ空気は沸騰するかのよう、
そこで聞こえるのは雌の昆虫が交錯する音。
僕は思う、自分を殺したい、なにかのセクトに入りたいと──
僕は何か行動を起こしたいのだ、けれどそんなことをしても無意味だろう。
遅くとも5時間後には、空は真っ暗になる──
蝿を叩き潰しながら僕は朝を待つことだろう。
暗闇が小さな口のごとくささめく──
それから、乾いた白い朝が、なんの希望もなしにまた訪れる。
・第一連二行目以降から詩人の錯乱的情景?
・金属の反射光=サングラスのこと?
・眠る太陽とは?(午後の避暑地の風景ならば、日没を想起させるこの表現はおかしい)
・「雌の昆虫」?→比喩的読解を促している?
・第三連「暗闇が小さな口の如くささめく」→第一連同様、非現実的な描写。
・避暑地での孤独な情景としての詩/超現実的な詩の重ね合わせ
・J’ai envie表現→それでも生の領域にとどまりたいという希求が読み取れる?
