2024/03/26 「ぼくの無条件の愛」ほか(『幸福の追求』)読解

試訳

ぼくの無条件の愛よ、
ぼくを天に上らせるおまえよ、
ぼくの孤独を守ってくれ。
日々は、ときどき、あまりに耐えがたい。

無限性という高貴な観念よ、
ぼくらの呼吸を易くするおまえよ、
ぼくの魂の道徳を守ってくれ。
ぼくは、ときどき、不潔な夜を過ごす。

だからぼくにはあの娘【こ】が必要
ぼくの夜の深みで見かけた
ぼくのことを考えてくれて、ぼくにほほえむあの娘【こ】——
視線が、夜に、輝く娘【こ】。

だからぼくにはあの子たちが必要
幸福に目を細め
ぼくらにすべてを、自分の心をくれるあの子たち——
時の流れを愛させる子。


「出会いなおす」

きみはもはやひとつの運命を理解しようとも
持とうともしない
この生では

きみは運命を持っていないことを知っている
あるいはもう
あるいはまだ
この受肉では

だからきみは次の受肉について考えている
そこでぼくらはふたたび会うだろう
数多の人と出会いなおすなかで。


血でできた塊、憎悪に満ちた頭蓋、
なぜ連中は群れる?
それが人間社会──
パリでまた夜がふける。

いつわりの蒼穹で
交差するユーロミサイル、
悲しげな目をした老学者がその下で
なにかの化石を調査している。

恐竜よ、善良な恐竜たち、
何を見る、汝らの知性の欠けた巨大な眼で?
みんな死ぬまで戦っていたのかい
麻痺性の悪徳蔓延る汝らの場所で?

黄金の時代は
良き自然の法はあったのか?
答えよ、善良な恐竜や
なぜ生はかくも残酷なのか?


モハーヴェ砂漠のすえ
樹齢二千年のサボテンあり。
其が生えたるは溶岩石の上、
その静けさはまるで守り神。

春分の分かれ目で、
地が傾く時刻、
インディアンたちはサボテンの前で
一晩中跪く。そして夜は燃ゆ

彼らの震える呪文【まじない】によって
それは蛇の言葉のごとき呪文。
途切れ途切れで甲高いその声で、
手なずけようとするは<時>

それを無理に折り曲げ、
その捩れを閉じむとて。
呪術師たち曰く、待ちたまへ、
陰険で狡猾たる、この<時>とて、

罠に嵌り
苦痛の呻きでできたこの建物のなかで息絶えるだろう。
すると我々は軽く、軽くなり……
永遠が訪れることだろう。


・「ぼくの無条件の愛」「関係修復」の二篇は二版以降削除されている。
 →詩篇の流れの上で不適とされたから?
 →その基準はテーマ的な適合性と詩篇の完成度の二軸(あるいはより複数の評価軸)から考察しうる?

・三部最後の詩篇「モハーヴェ砂漠のすえ」は急に物語調となっている。
・さらに「時」への反動的姿勢が詩篇を通じて訴えられている
 →この主題から、三部の詩篇を見直すべき?