2024/04/07 「縮約演算子」ほか(『幸福の追求』)読解

試訳

縮約演算子

夜の終わりごろ、つまり理想の時
ひっそりと空の中心の青さが広がっていく時に
ぼくは独りで通り抜けるだろう、まるで誰にも気付かれていないかのように、
無尽蔵のやさしく親しい
北極光のなかを。

それからぼくの歩みは秘密の道へと滑り込むだろう、
その一見平凡な道は
数年来入り組んだ迷路のなかを蛇行しているが、
ぼくはその道を見つけ出すだろう。

それは和らいだ慎み深い朝のことだろう。
ぼくは長いあいだ歩くだろう、よろこびも後悔もなく、
冬の夜明けのとてもやさしい光が
ぼくの歩みを親しげな微笑みで包むなか。
それは光に溢れた秘密の朝のことだろう。

周囲の人々は少しばかりのコメントすら拒む——
あの人は旅に出ましたよ、とすら。
数日後に必ず戦争が起こるだろう
東欧諸国で衝突が広がっている。


雲のきめ細やかで繊細なテクスチャが
木々の向こうで消える——
そして突然雷雨に先んじてぼやける、
空が大理石のように美しく塞がれている。


宗教的呼びかけ

僕がいるのは小岩石でできたトンネル──
二歩左隣の男には瞼が欠けてる
彼は僕を両目で凝視する。彼は自由で誇り高いと自称──
彼方で、この上ない遠くで、唸りをあげる豪雨の音声【おんじょう】。

山々のつくる傾斜で、最後の休憩──
もう一人の男は消えた。僕は一人で生き続けるだろう。
トンネルの壁はどうやら玄武岩製──
寒い。僕はグラジオラスの咲く国々を思い返す。

塩の味がしたあの翌朝の大気──
それから感じた二重の現前。
灰色の地面の上を蛇行する深く濃い線。
まるで古代儀式の棄て去られたアーチ。


音立てず、我々が忍び込んだのは架空の宮殿
そこは涙で包まれていた。
高くなっていった蒼穹はまるで囚われの風船──
男たちは武装していた。


・第三部では夜についての言及が頻出していたが、「縮約演算子」において朝あるいは夜明けが希望に満ちたものとして描かれている。

・「縮約演算子」の第四連は、冷戦への言及のように思える。

・上記二篇目は、認識の変化(詳細→曖昧)が描かれているように思える。

・「宗教的呼びかけ」は第二連まで基本的に現在形で書かれている一方で、第三連で「翌朝」という表現とともに半過去が、その次の行で単純過去が用いられている。この点に注目して、実際の状況経過は第三連→第一連→第二連なのではないかという解釈が読書会で提示された。

・これまでのところ第四部では、闘いや抵抗といったイメージが強く表れているという印象を受ける。